『神々は細部に宿る』
この小説も銃の描写が素晴らしい。
ピューティがパイと格闘し拳銃を取られる場面で、ピューティが拳銃を「取らせてやる」やり方が巧い。ハンターは、やはり、銃の事をかなり知っている。
1:
マグキャッチを押して弾倉を落とす。→拳銃から弾を抜くため。ほぼ抜けたがまだ1発残ってる。
2:
最後の1発は銃身後端の薬室(=チェンバー)に入ってるが、弾を抜く時間が無いので、引き金を引き撃つ。→拳銃を「空(から)」にするためだからパイに当てる必要はない。
3:
パイに「空」になった拳銃を取らせる。→弾の入ってない拳銃は鈍器にすぎないので、助かる可能性が飛躍的に向上する。

「神々は細部に宿る」とはこういう事なのだ。人物描写、構想、伏線、言葉の選択等小説の根幹がどんなに優れていても、一言半句の無知があればそこから瞬時に崩壊する。
ベイタダインを知らない人間が医療小説を書けない様に、銃口が上を向いてる時と下を向いてる時の意味の違いを知らない人間にミステリーは書けない。